カード・金融業界が直面する課題を解決するOSSの可能性

現在、カードビジネス分野では業界の発展に期待が高まっている。日本政府が2014年6月に発表した「日本再興戦略 改訂2014」の中で、「2020 年オリンピック・パラリンピック東京大会等の開催等を踏まえ、キャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性の向上を図る。」と明言したのだ。キャッシュレスによるビジネスチャンス拡大に、各社のIT部門には今後、どのようなシステム対応が求められるのだろうか。

 

2014年11月11日、レッドハット株式会社(以下、レッドハット)主催により、各企業IT部門がかかえる課題やチャレンジについて語りあうラウンドテーブルが都内で開催された。参加企業は8社。カード会社、通信キャリア、ITベンダー、インターネットサービスベンダーなど、国内トップクラスの企業から、IT部門およびマーケティング部門を統括するリーダーが出席した。参加者の一人は「決済サービスが日進月歩発展する中で、あらたな決済ソリューションの検討をすすめている。今日はそのヒントを持ち帰りたい。」と参加の理由を語った。

主催のレッドハットは1993年創業。米ノースカロライナ州に本拠をおき、世界33カ国でオープンソースソフトウェア(OSS)「Linux」を提供している。1999年に日本へ進出し、2003年以降12年連続で売上成長を遂げ、国内LinuxサーバーOS市場では83.2%のシェアを誇る。金融、製造、航空、ITなど、顧客は多岐に渡り、カード・決済業界もその一つだ。

 

 

■低廉な導入コスト

現在、カード・決済業界では、スマートフォンと連動した送客サービスや、購買履歴というビッグデータ活用など、革新的技術を活用したマーケティングに各社が取り組んでおり、カード決済の機会拡大を目指している。しかし、既存のメインフレームでは実現することのできない企業や、コスト面から新システム導入を躊躇する企業も存在する。そのような企業に対し、レッドハットはOSSを低廉に抑えた価格で提供している。とりあえず、その技術が自社で使えるのか、効果があるのか試してみたいという企業は多い。そんな先進的なサービスに挑戦する企業にとって、導入コストが低く、またビジネスが拡大したときに後付けでスケールアウトを自由におこなえるOSSは魅力的だ。レッドハット 水橋執行役員は「OSSは、どうしても初めは本当に使えるのだろうかという懸念を抱かれる場合があり、実際に実現したい機能をPOC(Proof Of Concept)として、検証してみる事をお勧めしている。お客様にとっても懸念の払拭になり、互いに要件の一部検証が出来、リスクの低減にもつながる。」という。

 

 

■高いリアルタイム性を実現

決済・金融分野にとって「リアルタイム性」は重要なトピックである。クレジットカードは売上主義なので、バッチ処理でよかった。しかし、デビットやプリペイドカードはオーソリが主体。リアルタイムに残高を確認し、利用金額を引き落とす必要がある。さらに、決済プラスアルファの価値をつけるため、オーソリデータに基づいたポイント付与やクーポンの発行、サンキューメールは不可欠になっている。リアルタイムに決済電文を処理し、データを分析、パーソナルなメッセージや特典を利用者のスマートフォンやタブレットに送信するにはオープンソース(OSS)が欠かせない。

 

FX取引サービス提供企業からの参加者は「FXにおいてはトランザクション処理の数は膨大であり、かつ高度なリアルタイム性が求められる。また経済指標発表や、要人発言などの情報は即時性が必要であり、メール通知やスマートフォンへのプッシュ通知などにより投資を促すというリアルタイム性の高いサービスも提供している。それらのシステムにはOSSを採用しており、トラブルなく運用できている。」と語った。

 

このようなリアルタイム性の高いサービスをおこなうには、膨大な量の処理を瞬時におこなえるシステムでなくてはならない。その上、決済・金融分野においては高度な可用性(アベイラビリティ)が求められるが、レッドハットのOSSはFX取引サービスでの導入のほか、東京証券取引所やメガバンクの基幹システムにも導入されている。OSSはメインストリームを構築するデファクトになってきたのだ。

 

■ビッグデータ分析への活用

カード会社ではより有効なマーケティング施策を実施するために、膨大な数の顧客データを分析する企業が増えている。それに対し、レッドハットはJBossを活用し、大量データのリアルタイム解析をサポートできるという。同社の提供するリアルタイムBigデータソリューションによって、イベント会場におけるタイムリーなナビゲーションや、位置情報や時間に応じたレコメンデーションを実現している。

 

議論が盛り上がるにつれ、ビッグデータ分析の中で各社が抱える課題も浮き彫りとなった。カード会社は過去の購買履歴はデータとして保有しているが、将来の購買を予測するのは難しい。一方、通信キャリアやWebサービス会社は、Webにおけるアクセスログをとることはできるが、そこには不必要な情報(ノイズ)が多いため、マーケティングに活用しづらいという課題があるという。そんななか、「過去の購買履歴から傾向を抽出し、アクセスログと照らし合わせることが実現すれば、より精密なマーケティング施策を実現する可能性があるのではないか」との声もあった。

 

購買データは本人のニーズそのものであるので、その効率的な活用方法が検討されている。OSS導入によってその取組みがさらに加速される可能性がありそうだ。

お酒と軽食を交えながら、ミーティングは2時間以上続いたが、議論は尽きない。参加者の一人は「中期的な視点でシステムの構成や開発の基盤を、どれだけ柔軟に整備し続けるかがビジネスの競争力にも直結することであると改めて強く認識した」と感想を語った。